「スピンを楽しもう(7) ~アップライトスピンの難ポジションを覚えよう~」の記事で「通常は難しいバリエーションは最初にやった1つしかレベルを認定されないが、US(アップライトストレート)だけはフリーレッグを前にした形と後にした形で2つレベルが獲れる」と書きました。
これを削除して訂正します。
そもそもなぜ上記のような話が出て来たかというと、海外のある選手がそう言っていたからなんですね。私はそれを彼から直接聞いたスケートファンの方から教えてもらいました。
その選手はコーチもしているので、選手だけしている選手よりはルールに精通しているはず、ISUは選手にメールやセミナーでルールを伝えたりするのでハンドブックはあまり読まないんだという話をその選手がしていたこともあって、ハンドブックに載せるまでもない暗黙の了解のルールなんだと思い込んでしまったのです。
実際、フリーレッグを前と後にしてレベルが2つ獲れると考えなければ説明できない(と当時は考えていた)ケースもありましたし…。
しかし、その後、テクニカルの資格保有者数人に間接的にですが質問する機会があり、このことを聞いたのですが全員に否定されました。
どうもUSでレベル2つ獲れる説は何かの間違いだったようです(何がどうなってそうなったのかはわからん)。
(余談ですが、スケート教室でジャッジの方に質問したらレベル判定についてはご存知なくて、これはツイッターで別のジャッジの方に聞いた時もそうだったんですが、ジャッジってテクニカルな知識は必要ないんだ!完全分業なんだと衝撃を受けました。
それでスケート教室のジャッジの方が「ぜひ日本スケート連盟にメールで問い合わせてください」とおっしゃるのでその通りにしたのですが、事務の方を介して私がテクニカルの方から受け取った答は「個々のレベル判定についてはその試合のテクニカルパネルの判断によるものなのでお答えできない」というけんもほろろなものでした。
質問していいって言ったじゃーん!(」゚ロ゚)」(」゚ロ゚)」(」゚ロ゚)」
なんでなんでしょうね。しょーもない陰謀論者からのその手の質問によほどへきえきさせられてるのでしょうか。なんで〇〇ちゃんのジャンプが回転不足なのよキィィなんでステップがレベル3なのよキィー!みたいな。それはそれで同情するけども。
でも技術とルールを真摯に勉強したいだけの者もいるんだぞ。門戸を閉ざして競技の発展はあるのか。素人は専門家の評価・判定をただ黙って受け入れてたらええねんとでも考えているのか。そんな考え方は認めん。認めんぞキィィ(*`ω´*)
閑話休題。
まあそんなわけでですね、ずっと悶々としていたのですが、答を得るきっかけを見つけました。
それが2018年2月にあった四大陸選手権の男子SP、ナム・ニューエンとケヴィン・レイノルズのスピンでした。
Jスポーツで岡部由起子さんの解説を聴いていると、同じトンプソンをナムはUS(アップライトストレート)で獲り、ケヴィンはNBP(非基本姿勢)で獲ったんですよ。
これにはびっくり!!
さっそくナムとケヴィンのスピンを比べてみましょう。
まずはナムから。
CCoSp4
レベルは難エントランス(アラビアン~トラベリングキャメル)①-キャメル-アップライトフォワード②-足換え-シット-非基本姿勢③-アップライトストレート④
動画はこちら(スピンのところから再生されます)
最後のトンプソンを「アップライトストレート」と岡部さんはコール。

次にケヴィン。
CCoSp4
レベルはキャメル-シットフォワード①-アップライトフォワード②-足換え-シットビハインド③-非基本姿勢④
この最後のトンプソンを岡部さんはアップライトストレートではなく「非基本姿勢」とコールしたわけです。

なぜ同じ姿勢でこのように判定が分かれたんでしょう?
ヒントはCCoSp4の前にやったFUSp4にありました。
レベルはデスドロップ①-アップライト基本-同じ足でのジャンプ②-アップライトストレート(クロスフット)③+8回転④
ここで既にアップライトストレートでレベルを獲っているわけです。
↓

普通なら後からやったCCoSp4のトンプソンは2度目のアップライトストレートということで、used(既にやった)として無効になりレベルは獲れないはず。
それがアップライトストレートではなく非基本姿勢とコールされた。
トンプソンは軸足の膝がアップライトの割には深く曲がっているので非基本姿勢と言えなくもないです。
既にアップライトストレートを使用してレベルを獲っている場合に後からトンプソンをやったら、アップライトストレートではなく非基本姿勢として認定してよい…みたいなことになっているのかな? と思いました。
スケーターズフェイバー(複数の解釈が成り立つ場合はスケーターに有利になるよう判定する。ただし他の選手に不公平にならない範囲で)的なものかな、と。
でないとわざわざケヴィンも最初から構成の中に入れてきませんよね。下手するとusedで無効にされちゃうんだから。
スケートファンがレベル構成を見る時はつい先入観で、トンプソンはアップライトストレート、パンケーキはシットフォワードみたいにこの姿勢はこのカテゴリと決めつけてしまいがちですが、テクニカルは見たままの姿勢がどのカテゴリかを判定しているんだなあと思ったケースでした。
とはいえ、この記事を書きながら、ケヴィンのこの姿勢、ほんとにトンプソンなのか…という疑問が頭をもたげてきました(^^;

よくあるトンプソンと比べると、軸足とフリーレッグの間が離れてるんですよね。
どうなんだろう。
ケヴィンはJスポの小塚ラボでアップライトが好きでこだわりがあると言っていたので、トンプソンも他の選手と同じようなスタイルにはしていないだけで、これもれっきとしたトンプソンであるということなのかもしれませんが…。
これ、トンプソンじゃなくてよく似た形の非基本姿勢だったりしてな(^^;
ついでに
「スピンを楽しもう(7) ~アップライトスピンの難ポジションを覚えよう~」の記事で「US2つでレベル獲ってる」と間違って挙げていたこれらの例はどう解釈したらいいのか考えてみます。
2015年国別対抗戦フリープログラムでのマキシム・コフトゥン選手のスピン。

↑
通常なら
左がCCoSpのUS(両足に体重をかけて回るクロスフット)
右がFUSpのUS(フリーレッグ(左足)を後方に交差させて片足で回るクロスビハインド。通称トンプソン)
という判定になるはずですが、同じプログラムで同じカテゴリの難しいバリエーションを2回使ってレベルを獲ることはできません・・・でしたよね。
それじゃということで、こう考えてみました。それぞれのレベル構成(丸数字がレベルの数)
CCoSp4難しい入り方①→キャメルアップワード②→シット基本形→足換え→シットビハインド③→
アップライトストレート(両足で回るクロスフット)④
FUSp4難しいフライング(バタフライ)①→アップライトフォワード②→
アップライトレイバック(トンプソン)③+そのまま8回転④
CCoSp4に入っているアップライト姿勢はクロスフットのみなので、もしこれがアップライトストレートでなければコンビネーションスピンに3つの基本姿勢が揃ってないとしてVがついてしまいます。だからアップライトストレートで間違いないでしょう。
FUSp4はアップライトの単一姿勢のスピンなので、このトンプソンは非基本姿勢ではない。
それゆえ、UL(アップライトレイバック)としてレベルを獲っているのではないかなと思いました。レイバックはアップライトの仲間なので単一姿勢に入れてもOKと見なされるのでは。
2013年のNHK杯ショートではジェレミー・アボット選手が、同じスピンの中でコフトゥンのようにトンプソンとクロスフットを併用しています。
このスピンのレベル構成は、難しいフライング(デスドロップ)①→
アップライトレイバック(トンプソン)②→
アップライトストレート(両足で回るクロスフット)③+そのまま8回転④かなと思います。
こちらは2015年のスケートカナダでのペトロフ選手のCCoSp3p4
すんごい悩んだんですが、今ふっと思いつきました。こういう構成かもしれません。
シットフォワード①-アップライトストレート②-足換え-キャメル-シット-NBP(非基本姿勢)③-アップライト基本④(足換え後3基本姿勢④)
非基本姿勢と最後のアップライトが曲者です。
膝を深く曲げていったん非基本姿勢でレベル3を獲り、その後、膝を伸ばして普通のアップライト姿勢になって、足換え後3基本姿勢でレベル4を獲っているように思えます。同じ姿勢なんだと思っていたのでずっとわかりませんでした。
以上、たぶんこうじゃないのかな~というマニアックなアップライトのお話でした。
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