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宮部みゆき『小暮写眞館』 感想



今年は国民読書年(全然浸透してないが)なので、たくさん本を読もう! と正月に誓ったのに、1年の半分が過ぎた今、13冊しか読んでいない(漫画はいっぱい読んでるが)。言うまでもなくネットのしすぎ。どうでもいいページをダラダラ読んでるだけで、あっという間に2時間や3時間はすぐ経つもんなあ。

こんなことではいかん。どげんかせんといかん。←こればっか

まあそんなわけで、ネットの合間に宮部みゆきの『小暮写眞館』を読みましたですよ。
1995円もするので、図書館で借りようかとチラと思ったけど、「あなたは思い出す。どれだけ小説を求めていたか」なんて帯のアオリに書いてあったら、乗せられ上手な私としてはもう買うしかない! ですよ。

主人公は高1の男の子、花菱英一。彼の両親はちょいと酔狂なところがあって、築33年のボロ写真館を買い、少し手直ししただけで看板もそのままに住み始める。おかげで写真館がまだ営業していると誤解され、“心霊写真”が持ち込まれたりして、英一はその謎の解明に乗り出すはめになる。

英一には小3の弟のピカことヒカルがいるが、彼らの間には4歳でインフルエンザ脳症で亡くなった風子というきょうだいがいた。この風子の死が英一とピカ、母、父、それぞれの心に影を落としており、普段はそんなことはほとんど感じさせない明るい一家なのだが、後半になってそれが一気に表面に出てくる。

心霊写真や幽霊といった題材が出てくるが、そこは宮部みゆき、通りいっぺんのオカルト話ではない。袖すり合って縁ができた人々との温かな心の触れ合いが描かれている。

読んでいる最中も読み終えたあとも、感じたのは宮部みゆきの腕の見事さだった。職人技というより、もはや匠の技である。うまいのだ。いや、むしろうますぎてかえってそれが鼻につくところもあるほどに。

丹念に丹念に描写を積み重ね、丁寧に丁寧に伏線を積み重ねていっている。伏線無視、人間の深い心の襞(ひだ)無視のご都合主義な小説やドラマが多い中、この丁寧さは得がたい。

たとえば、英一が最初の“心霊写真”の謎を解く鍵を握る女性と会った時、その女性は初対面の高1の男の子に自分の結婚生活とその破綻について語る。

普通ならあり得ないと思うだろう。そんな初めて会った、しかも子供に、自分の身の上話をペラペラしゃべる人間がおるかと、ヘタな作家の描く話ならそんな違和感を覚えてしまうだろう。

だけど、タクシーの運転手の背中に向かって話すみたいに、行きずりの知らない人に、いや、知らない人だからこそ、自分の抱えているものを打ち明けてしまいたくなる時があるというようなことをこの女性は語るわけですよ。

それがとても説得力があるので、彼女が英一に込み入ったプライベートな話をしても、自然な成り行きに感じる。そういう手腕がすごいなと思う。

宮部みゆきの書く作品に出てくる主人公の多くは、躾の行き届いた家庭に育った、一本筋の通ったきれいな魂を持った人物で、そういう人物像をわざわざ作ったというより、書き手の精神性が自然とにじみ出ているような感じがして、彼女は昔の日本人が受けてきたような、きちんとした躾を受けてきた人なんだろうなとずっと思っていた。

その思いは今も変わらないけど、今回の作品では主人公の英一がはっきりと、自分やコゲパン(英一の友達の女の子)の家庭は躾がきちんとしていると自覚するくだりがあり、意図的にそういう人物を描いているところもあるのかな、精神的に荒んできた今の日本人へのアンチテーゼか? などと、うがった読み方をしてしまったよ。

ラスト近くの一文を読んでから、カバー写真を見ると感無量。作者と出版社の合わせ技といったところ。
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[ 2010/06/19 ] 倉庫5 | TB(0) | CM(0)

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