2017 06123456789101112131415161718192021222324252627282930312017 08

スピンを楽しもう(3) ~ルール勉強の必携アイテム~

前回の記事で羽生結弦選手の今季フリー、「SEIMEI」のスピンのレベル判定をやってみましたが、「難しいポジション(以下、難ポジション)」という言葉が山ほど出てきたのを覚えていますか?

選手がレベル獲得のために一番よく使うのがこの難ポジションなんです。

だから、レベル判定をしようと思ったら、まずは難ポジションを覚えましょう。

じゃあさっそく、難ポジションについて見ていきましょう…と言いたいところですが、ちょっと待って。
その前に、これだけは押さえておきたい基本的なことを。

今回の記事では、スケートファンがルールを勉強するための必携アイテムとも言える2冊のルールブック、「テクニカルパネルハンドブック」と「コミュニケーション」について取り上げます。


この2冊、どういう違いがあるかというと、

★ステップ、スピン、ジャンプについてのルールが載っているのが「テクニカルパネルハンドブック」

★基礎点、GOE(出来映え点)を付ける基準などが載っているのが「コミュニケーション」



毎年夏頃、ルール改正を終えたISU(国際スケート連盟)が英文で発表し、そのあと、JSF(日本スケート連盟)が日本語訳を出します。

それぞれの公式サイトに掲載されているのですが、探すのが大変なので私は適当にキーワードで検索しています。そして、見つけたら印刷して手元に置いています。

今シーズンの改正点には下線が引いてあります。今シーズンから無くなったルールについては、昨シーズンのと見比べないとわかりませんが、まあ、初めのうちはそこまでやらなくてもいいんじゃないのかな~と思います。


ではまず、テクニカルパネルハンドブックから。
PDFファイルで提供されています。

テクニカルパネルハンドブック 2015/2016版

見てみました?

難しいですか? 難しいですよね。
難しくて当たり前です。技術審判やコーチや選手が読むものなんですから。ファンが読むようには書かれてないんですから。

でも、最初はチンプンカンプンでも、知識がついてくるとだんだん意味がわかってきます。
だから、「やっぱりルールなんて難しい。無理」って尻込みしないでくださいね(とか言ってる私もわからないことがいっぱいだよ)。


テクニカルパネル(技術審判)は3名いて、このハンドブックのルールに基づいて選手の演技を判定しています。

判定コールは選手の演技を見ながら、こんな感じでやります。別に覚える必要はないので、さらっと読み流してください。

選手がそれぞれのジャンプやスピン、ステップに入る前、アシスタント・テクニカル・スペシャリストが要素のコールをします。

判定をするテクニカル・スペシャリストに先入観を与えないよう、回転数や種類などは告げず、ジャンプ、スピン、ステップといった要素名だけをコールします。

たとえば、3月に上海で行われた世界選手権のフリー、羽生選手の4回転サルコウが2回転になってしまいましたが、アシスタント・テクニカル・スペシャリストは彼がジャンプの助走に入った時、「これから4回転サルコウを跳びます」とはコールせず、ただ単に「ジャンプです」と告げるわけです。

テクニカル・スペシャリストはその要素の種類や回転数、エッジエラーの有無(フリップとルッツの場合)などを判定しコールします。

後で確認する必要がある場合は、同時にレビュー要請をかけ、演技終了後にビデオで確認します。採点結果が出るまで時間がかかるケースはビデオ確認をやっているわけです。

同じく、先ほどの羽生選手の例でたとえると、テクニカル・スペシャリストは4回転が2回転になったのを見て、ただ単に「ダブルサルコウ」とコールします。たとえ知っていても「4回転の予定が」とかの余計な情報は入れません。

ハンドブックのP2に「コールの手順」として、「要求される要素ではなく実際に行われた要素をコールすべきである」とありますね。予定ではなく見たままをコールすることを指しています。

テクニカル・コントローラはテクニカル・スペシャリストのコールの確認と訂正を行います。判断が割れたら、3名で多数決で決めます。

GOE(出来映え点)を付けるジャッジパネルも、見たままを評価します。4回転サルコウを跳ぶはずだったのに2回転になっちゃったわ失敗ねみたいな見方はしません。

目の前で行われたのが2回転サルコウなら、本来の予定は関係なく、その出来映えをシビアに評価するだけです。
ちなみに、この時の2回転サルコウには0.03の加点が付いています。

こういう知識は、J Sportsのフィギュアスケート放送の解説を聴いていると付いてきます。→J Sports公式ページ

テクニカルパネルやジャッジパネルの役割については、2013-2014シーズンに放送された「フィギュアスケートラボ」というスペシャル番組で詳しく解説していました。

その時の内容をまとめた記事があります。お時間のある方はこちらもどうぞ。→ジャッジによるTESとPCSの解説 ~採点基準を知りたい 疑問を解決したい~

当時のルールで語られているので細かい点が今とちょっと違う点もありますが、そこは気にせずにジャッジパネルとテクニカルパネルがどんなふうに演技を見ているかをご覧ください。とても興味深いですよ。


*****


ちょっと長くなっちゃいましたがスピンの話をしましょう。

スピンのルールは、テクニカルパネルハンドブックのP8~20に載っています。

P8~P11がルールについての概要。

P11~12に載っているのが「レベル特徴」
レベルを獲るために必要な条件が載っています。全部で13項目。
これを一つクリアするとレベルが一つ獲れるのです。

P12~18の「明確化」は「レベル特徴」の必須条件を詳しく解説したものです。

P19~20には難ポジションの例が画像つきで載っています。が、これだけ見てもわかりにくい(^^;)

「レベル特徴」について詳しく触れようと思ったんですが、長くなるので次回に回して、「コミュニケーション」のことを書いて、この記事は終わりにします。


PDFファイルはこちら。

国際スケート連盟コミュニケーション 第1944号
シングルおよびペア・スケーティング
2015-2016シーズンにおける価値尺度(SOV)、難度レベル(LOD)、GOE採点のガイドライン

シングルについて見ていくと、
P2~5が価値尺度(SOV)

ジャンプ、スピン、ステップの基礎点とGOE(出来映え点)+3~-3がそれぞれ何点に換算されるかが載っています。
どういうふうに見るのか、例を挙げて見ていきましょう。

たとえば、これはジュニアグランプリシリーズ アメリカ大会における山本草太選手のフリー演技です。


最初のスピンは0:50あたり。プロトコルを見るとFSSp(フライングシットスピン)、末尾に3とあるのでレベル3ですね。

空中で完全なシット姿勢をとる難しいフライングでスピンを始めてレベル1、難ポジションのシットフォワードでレベル2、難ポジションのシットビハインドでレベル3、そのまま8回転してレベル4を獲るつもりが、7回転くらいで体を起こしてしまい、四つ目のレベルが獲れなかったようです(違ってたらどなたかご指摘を)。

FSSp3は価値尺度(SOV)表のP3に載っています(項目名と表を見やすいように加工してくっつけました)。

600sov


BASEの点数は2.6とありますね。
これがフライングシットスピン レベル3の基礎点です。GOE(出来映え点)を加える前の素の点数、プロトコルのBase Valueです。

プロトコルはこちら。表示幅が狭くて全部表示できないので、お手数ですが画像をクリックしてください。
600sota-p

プロトコルではGOEは一番高い点と一番低い点をカットします。この場合は3と1ですね。斜線を引いてみました。

残ったGOEは2と1。
2を価値尺度(SOV)表の+2の列をたどって見ると1.0、1は0.5です。

そのままの点数を足すのではなく、こうやって換算するのは、技によって難易度に違いがあるからです。
たとえば、3A(トリプルアクセル)の+3は3.0ですが、2A(ダブルアクセル)の+3は1.5と、より難しい方に高い点数が入る仕組みになっています。

プロトコルの各ジャッジがつけたGOEを表の数字で置き換え、上下カットを除いた7人分を足して人数で割って平均を出すと、
(1.0+1.0+0.5+0.5+0.5+0.5+1.0)÷7人=0.71428…となります。

小数点第3位で四捨五入して0.71、これが最終的なGOEです。
そして基礎点2.6+GOE0.71=3.31が山本選手のフライングシットスピンの点数となります。


次に、P8~9の「難度レベル」については、テクニカルパネルハンドブックと被る点もあるので省略します。

P12、14のGOE(出来映え点)採点ガイドライン、これが結構面白いんです。

特にP12の加点ガイドライン、GOE+1を獲るにはこのうちの2項目、+2を獲るには4項目、+3を獲るには6項目をクリアしないといけません。

選手の演技をプロトコル片手に見ながら、GOE+2をつけたジャッジがいれば、どの項目を採用したのかな、という目で見てみるのもまた違った楽しみ方だと思います。


長くなりついでにこれも。プロトコルの探し方です。
ISUのサイトにありますが(国内大会の場合は各国スケート連盟のサイト)、探すのが面倒なので私は適当に「大会名+リザルト」のキーワードで検索します。
過去の大会なら、Wikipediaの各大会ページの「出典」のところに「公式結果」としてリンクが張ってあるので、それをクリックしてもいいでしょう。

重要なのは、プロトコルだけを探さずにリザルトページをまず見つけることです。

リザルトのページというのはこんなのです(例:ジュニアグランプリシリーズ アメリカ大会)。
result

「Result」をクリックすると順位表が、「Judges Scores(pdf)」をクリックするとプロトコルが出ます。右クリックで新しいタブかウィンドウで開くと使いやすいです。

プロトコルはSP(ショートプログラム)とFS(フリースケーティング)が別になっていて、それぞれスコア順になっているので、最終順位だけ知っていても、お目当ての選手を探すのが大変なことがあります。

そんなときに「Result」ページでそれぞれの順位を確認するわけです(山本選手の例だとSP2位、FS3位→総合3位)。


ということで、今回の記事はこれにて終わりです。思ったより長くなってしまったよ…。お~い、大丈夫ですか。頭こんがらがってないですか。




【おさらい】

★ファンがルール勉強をする上での必携アイテム2冊
・ステップ、スピン、ジャンプについてのルールが載っているのが「テクニカルパネルハンドブック」
・基礎点、GOE(出来映え点)を付ける基準などが載っているのが「コミュニケーション」
※これらは毎シーズン更新される。

★テクニカルパネルは選手が予定した技ではなく、実際に行った技を見たままコールする。
★ジャッジパネルも選手が予定した技ではなく、実際に行った技を見たまま評価する。

★プロトコル(採点表)のGOE(出来映え点)は、「コミュニケーション」の価値尺度(SOV)表で換算した点数を入れている。

★「コミュニケーション」のGOE採点ガイドラインを片手に演技を見るのも楽しいよ♪

★プロトコルを見るには、リザルトページを活用すると便利。




スポンサーサイト
[ 2015/09/13 ] スピンを楽しもう | TB(-) | CM(0)

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する