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スピンを楽しもう12 ~8回転を数えよう~

今回はレベルを獲る特徴のうち、「8回転」について取り上げます。

資料はいつものようにこちらを。
テクニカルパネルハンドブック→http://www.jsfresults.com/data/fs/pdfs/comm/2015hb_single_08-16j.pdf

P11の「レベル特徴」にスピンでレベルを獲る要件が13項目並んでいますが、その中の10)にこう書いてあります。

10) 姿勢/バリエーション、足、エッジを変更せずに少なくとも8回転(キャメル、レイバック、基本姿勢の難しいバリエーション、非基本姿勢の難しいバリエーション(スピン・コンビネーションのみ))

言い換えると、こういうことです。

キャメルレイバックならどの姿勢でもOK

シットアップライト非基本姿勢難ポジションでのみ。
 (非基本姿勢はコンビネーションスピンにおいてのみ)

・8回転の途中で姿勢やエッジを変えたり足換えをしてはいけない。



どの姿勢ならOKだとか、そんなに難しく考えなくてもいいと思います。
たとえばアップライトの基本形で何十回と回ってみてもレベルは獲れないのに、わざわざそれをやる選手はいないでしょう?

たくさん回転していて、数えてみたら8回転以上あって、他にレベル獲っている特徴がなさそうなら「8回転」でレベル獲ってるんだなと考えればいいでしょう。
(暴言…か? (^^;))


それよりも肝心なのは、回転数を数えることです。
これがけっこう難しくて、私も修行中です。

予定されている構成のレベルが全部獲れている場合は、たとえきちんと数えられなくても、まあ獲れてるんだしいいかとなるんですが、レベルを取りこぼしたとき、いったいどこで落としたのか原因を探るのに、回転数をちゃんと数えられないと厳しいんですよ。

いや、尻込みしないでください(^^;) 慣れたらできるようになりますよ。


********

では具体例を見ていきますので、カウントに挑戦してみましょう。
私がどうやってカウントしているか、やり方を紹介します。もちろんこのやり方が正しいかどうかはわかりませんが。


羽生 結弦選手
GPF(グランプリファイナル)のSP(ショートプログラム)より
FCSp4(フライングキャメルスピン レベル4・・・跳んで入るキャメルだけのスピン)
動画はこちら→https://youtu.be/USLUuaw0ZDU?t=1m47s

ノーマルスピードでカウントするのは難しいので、下の画像にあるように、YouTubeの画面の歯車マークをクリックし、速度を0.5か0.25に調節してスローで見てみてください。

youtube

録画があれば、ご家庭のレコーダーでスローで見た方がわかりやすいかもしれません。

さて、羽生選手のFCSp、レベル構成は、難フライングエントランス(トウアラビアン連続からのバタフライ)①-キャメル基本-キャメルアップワード②-キャメルサイドウェイズ③+8回転です(丸数字がレベル)。

キャメルサイドウェイズ③+8回転④という書き方をしていますが、これはキャメルサイドウェイズでまず2回転して難ポジション(ハンドブックP11で言うところの「難しいバリエーション」)でレベルを獲り、その姿勢のままさらに6回転して合計で8回転になったときにまたレベルが獲れるという意味です。

難ポジションで8回転すると、それだけでレベルが2つ獲れるのです。

キャメルサイドウェイズで8回転をカウントするタイミングですが、動画を見ると、天を仰ぐようなキャメルアップワードの後、このようにキャッチフット(フリーレッグを持つ)してキャメルサイドウェイズに移行しようとしていますね。
この時点ではまだ姿勢が確立していないので回数のカウントはしません。

yh_gpf1


下の画像を見てください。ここです。ここがカウント開始ポイントです(わかるかな)。動画を止めてキャプチャしたのでほんのちょっとズレたかもしれませんが。
肩のラインを氷面に垂直に立て、キャメルサイドウェイズの姿勢が確立したところでカウントを始めます
私は全体を見ながら頭の位置を意識して、頭が同じ場所に来たら1、2、3…というふうに数えています。フリーレッグの位置を見るときもあります。

yh_gpf2

8回カウントできましたか?
全部で11回回ってましたね。もう間違いなく「8回転」でレベル獲ってますね。



では次の例を見てみましょう。

ハン・ヤン選手
四大陸SPよりCCoSp3p4(チェンジフットコンビネーションスピン 3ポジション レベル4…足換えのある基本姿勢3つを組み合わせたスピン)
動画はこちら→https://youtu.be/ATJvdK0dWOo?t=42s

レベル構成は、キャメル基本-非基本姿勢①-シットビハインド②-足換え-アップライトストレート③+8回転です。

最後のアップライトストレートのクロスフットスピン(体重を両足に均等にかけて回るアップライトスピン)で8回転しています。
両足がついた時点からカウントを始めるので、まだここではカウントしません。

hy_4cc1


フリーレッグが氷面につきました。ここですね。この瞬間からカウントを始めます。

hy_4cc2

動画を見ながらカウントしてみてください。
9回転くらいしていましたね。


余談ですが、このスピンの中でやっている非基本姿勢がとてもユニークです。

hy_4cc3

非基本姿勢とは、基本姿勢(シット・キャメル・アップライト)の定義のどれにも当てはまらないものを言います。

基本姿勢の定義(ハンドブックP8)
シット…太腿が氷面に少なくとも平行になるまで腰を落とす。
キャメル…フリーレッグを後方に膝はヒップより高く上げる。
アップライト…膝は真っ直ぐかやや曲げて。レイバックとビールマンもここに含まれる。

これらの定義を頭に置いて、上の非基本姿勢を見てみると、
腰の位置が高く、太腿が氷面に平行になっていないのでシットではない。
フリーレッグは後方だが、膝がヒップより低いのでキャメルでもない。
膝が深く曲がっているのでアップライトでもない。
したがって、非基本姿勢と判断されます。

この姿勢はジャッジ・パネルのルールブックである「コミュニケーション」にあるGOE(出来映え点)の採点ガイドラインのプラス項目「6)独創的でオリジナリティがある」に合致します。
もちろん、1つ合致したから即GOE+1点もらえるというような単純なものではないですが、ジャッジにプラス評価される点を1つでも積み上げていくというのは強みになるでしょう。


脱線が長くなりましたヾ(^-^;)
次の例に行きます。


キャメルとアップライトの例を見てきましたが、次はシットの例です。

パトリック・チャン選手
四大陸FS(フリースケーティング)より
FSSp4(フライングシットスピン レベル4 跳んで入るシットだけのスピン)
動画はこちら→https://youtu.be/EAI44TaFIHs?t=3m58s

レベル構成は、難フライングエントランス(デスドロップ)①-シットフォワード②+8回転③-シットサイドウェイズ④です。


デスドロップを跳んだ後、すぐにシット姿勢に入っていますが、まだシットフォワードになっていないのでカウントはしません。

pc_4cc1


フリーレッグをつかみ、上体を横にひねっています。
はい、ここでシットフォワードの姿勢になりました。カウント開始です。

pc_4cc2

9回回ってましたね。



最後はレイバックスピンの例です。

本郷 理華選手
四大陸SPよりLSp4(レイバックスピン レベル4)
動画はこちら→https://youtu.be/qVsfoTNsFFo?t=1m14s

レベル構成は、レイバックサイド→バックへの姿勢変更①+8回転②-ヘアカッター③-アップライトビールマン④です。

レイバックスピンは女子のみSPでの必須要素です。SPで使うのでそのままFSでも取り入れている選手が多数います。
他のスピンにはない、特殊なレベルの獲り方があり、それが、

サイド→バック、またはバック→サイドへの姿勢変更(各2回転必要)

です。


ちなみにヘアカッターというのはフリーレッグを手でつかみ頭の近くに引き寄せる難ポジションのことです。
(頭から離れて持つのはキャッチフットと分けて私は呼んでいたのですが、Jスポーツの解説でジャッジの岡部由起子さんがどちらもヘアカッターと呼んでいたので、もしかしたらレイバックでフリーレッグを持つのは全部ヘアカッターと呼んでいいのかもしれません)

本郷選手は頭を後に反らしたレイバック姿勢になってから8回転する間、下のように腕で表情をつけています。

rh_4cc

ルールでは「姿勢を変更してはいけない」とありますが、頭を後に反らした姿勢は変えていないので、このように腕を動かしたりする振付をやるのはOKということなんですね。


以上、キャメル、アップライト、シット、レイバックでの8回転の例を見てきました。

さて、演技を見ていくと、何度見ても回転数が8回転に足りないじゃないかと思う例にも出くわすかもしれません。
陰謀論が大好きな人なら、そら見たことかフンダララと騒ぐところでしょうが、演技終了後の振り返りスロー再生でジャンプやスピンの別角度映像を見たことがありますよね? 印象が違うと感じたことはありませんか?

テクニカルが見ている角度と私たちが見ている角度は違います。
どの時点でカウントを開始するかによって結果は違ってくることでしょう。
そもそも一定以上の実績を持つ元選手で資格試験にパスしなければテクニカルにはなれません。
知識も経験もない素人が判定を疑うのは慎重でありたいと思います。
だいたいが自分の思い違いであることが多いのですから。

私はルールを勉強していて、一つ知識を得るごとに、いかに自分が無知であるかを思い知ります。
疑問を抱いたら、短絡的に決めつけるより、まずは信頼できる情報を集めて判断したいと思っています。


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おまけと言っては何ですが、羽生選手のFSにも8回転があります。
GPFの映像がこれ。

yh_gpf

何が何だかわかりゃしねぇ(;´Д`)

フィギュアスケートに天井カメラはいらない。特にスピンは真上から撮るな!
というのがおわかりいただけたかと思います。


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[ 2016/03/06 ] スピンを楽しもう | TB(-) | CM(0)