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スピンを楽しもう番外編 ~羽生結弦「SEIMEI」レベル判定~

オータムクラシックにおける羽生結弦選手のフリープログラム「SEIMEI」のレベル判定をします。

~ 参考資料はこちら ~
★男子シングルFSプロトコル(フリープログラムの採点表)
★テクニカルパネルハンドブック(技術審判のルールブック。スピンのルールはP8~20)
★コミュニケーション(要素の基礎点やGOE採点のガイドラインなどが載っているルールブック。スピンはP2~4、P12、P14)
~~~~~~~~~

羽生選手のスピンはコンビネーションスピンが二つにシットスピンが一つの全部で三つ。

プロトコルにあるスピンの略記号の説明は、こちらの図がとてもわかりやすいです。




まずは一つ目。FCCoSp3p4(フライングチェンジフットコンビネーションスピン 3基本姿勢入り)、跳んで入る足換えありのコンビネーションスピン。基本姿勢がシット、キャメル、アップライトの三つ入っています。

ちなみに基本姿勢を入れる場所はスピンのどこでも構いませんし、やる順番も決められていません。

FCCoSp3p4

左足で踏み切って右足を振り上げて降り、そのままキャメルスピンを始めます。こういうフライングで始めるスピンの入り方をフライングキャメルと呼びます。

このフライングキャメルは難しいフライングとは認定されないので、レベルは獲れません。

(テクニカルパネルハンドブックP13「難しい入り方とフライング・エントランス」に「通常のフライング・キャメルへの難しい入り方はレベルの特徴として数えられず、この場合の“難しい入り方”は使用したとみなされない。」とあります。「難しい」って言ってるのになんでや(;´Д`) )

上記のルールは難しい入り方で通常のフライング・キャメルをやった場合のことですね。勘違いしていました。すみません。
正しくはこちらを引用すべきでした。
テクニカルパネルハンドブックP13「フライング・スピン/フライング・エントランス・スピンにおけるフライング姿勢の難しいバリエーション」より、「明確なバタフライ・エントランスや、空中でほぼスプリットとなる姿勢」がフライング・キャメルの場合、難しいフライングの入り方としてレベルが獲れます。
「通常のフライング・キャメルの入り方を行っていても、(別のスピンで行う)難しいフライング・エントランスを特徴として数えることができる。」とは、通常のフライング・キャメルではレベルは獲れないけど、別のスピンで難しいフライング・エントランスをやってレベルを獲ることができるよという意味です。

通常じゃない難しいフライングキャメルもあるようなのですが、ただ今勉強中でフライングはよくわかってなくて解説できません。ごめんなさい。またわかったら違う機会にお伝えします。温かく見守ってやってください。 

ac-fc
通常のフライングキャメル


レベル1:難ポジション(CU)

肩を氷面に垂直よりさらに上にひねって天井を仰ぐような姿勢を取ります。
CU(キャメルアップワード)という難しいポジションですが、これで2回転するとレベルが獲れます。ここでレベル1です。

fccosp3


レベル2:難ポジション(CS)

肩のラインを氷面に対して垂直に立て、キャッチフットします。CS(キャメルサイドウェイズ)という難しいポジションです。いわゆるドーナツスピンですね。身体が柔らかいので形が美しいです(*´ω`*)
2回転するとレベルが獲れます。ここでレベル2です。

fccosp4


足換えスピンで片方の足で獲れるレベルは二つまで。足を換えないとこれ以上はレベルが獲れません。
右足から左足に足換えをし、今度は左足でレベルを獲りにいきます。
ちなみに足を換える順番は決まっていません。右足→左足でも左足→右足でもOKです。

レベル3:難ポジション(SS)

コンビネーションスピンとは基本姿勢(シット・キャメル・アップライト)のうち、二つ以上入ったスピンのことを言いますが、このスピンは基本姿勢三つ入りなので、全部をやることになります。
さっきキャメルをやったので、この後シットとアップライトをやらないといけません(やる順番にルールはありません)。

フリーレッグを体の横に位置させ、上体はひねるSS(シットサイドウェイズ)という難しいポジション。
2回転するとレベルが獲れます。ここでレベル3です。

fccosp5


レベル4:難ポジション(UB)

ISUレフェリーの岡部由起子さんが、他の選手の時の解説でですが、「姿勢変更を速くできるということは技術力が高いということ」だとおっしゃっていました。
羽生選手は姿勢変更が速くて、流れるようにスムーズで美しいです。シット姿勢から立ち上がり、ビールマンに持っていく姿勢もきれいですね。

キャッチフットして、フリーレッグを頭のてっぺん方向へ持ち上げ釣り上げるような形、おなじみのビールマンスピン。
UB(アップライトビールマン)という難しいポジションです。
2回転するとレベルが獲れます。

ここでレベル4達成です。同時にキャメル、シット、アップライトと三つの基本姿勢が入ったので、FCCoSp3p4(フライングチェンジフットコンビネーションスピン 3基本姿勢入り)が実施できたとテクニカルパネル(技術審判)より認定されます。

fccosp6

音楽によく合ったスピンでしたね。
特筆すべきはスピンの前。3F(トリプルフリップ)を跳んで着氷した右足でそのままターンを踏み、すぐさま左足に踏みかえてフライングをしています。

これはスピンのGOEでなくPCS(演技構成点)のトランジションの項目で、プログラム全体のつなぎの濃さとして評価されるうちに入るのかもしれませんね。

プロトコルによると、FCCoSp3p4の基礎点は3.50 ジャッジがつけた個別GOEが1 1 2 1 1 2 2
上下カットして残り5人分のジャッジの値を「コミュニケーション」のP4、「スピン・コンビネーション、足換えあり(3姿勢)」の表にある「(F)CCoSp3p4」の欄のSOVにそれぞれ換算し、合算して平均値を出すと、最終的なGOEが0.70
3.50+0.70=4.20がこのスピンの得点となります。
(詳しいやり方は前の記事をご覧ください。参考資料はこのページの最初にまとめてあります)

動画はこちら→Yuzuru HANYU FS 2015 Autumn Classic International
クリックするとこのスピンのところから始まります。再生速度を遅くするにはYouTube画面下の歯車マークをクリックして、速度を変えてください。



二つ目のスピンはFCSSp4(フライングチェンジフットシットスピン)。跳んで入る足換えありのシットスピンです。
こちらはコンビネーションではなく、シット単独ですね。

FCSSp4
レベル1:難しいフライングの入り方(デスドロップ)

かっこいい名前です。デスドロップ。なんだか強そうです。

「KENJIの部屋」での対談の時、宮本賢二さんがアクセルジャンプの練習をしていたら口の悪い仲間に「デスドロップか?」と言われたという話が出てきましたが、まさにそれです。
アクセルジャンプを跳ぶような姿勢で、フリーレッグを上に向かって振り上げて跳び、着氷と同時にシット姿勢に入ります。

ac-ddrop
デスドロップ

上のGIF動画はちょうどその前のジャンプを降りたところから入ってますが、3Lz(トリプルルッツ)着氷後、両腕を水平に広げてフリーレッグを伸ばしたチェック姿勢を取った後、振り向きざまにデスドロップを跳んでスピンに入るという荒業をやってのけてます。前のスピンの3F後の入り方といい、恐ろしい子!((;゚Д゚))

前の「バラード1番」の記事にも書きましたが、難しいフライングはやったからといってすぐレベルが獲れるわけではないんですね。
フライングしたものの、そのせいで後のスピンがグダグダになってはいけないわけです。やりゃーいいってもんじゃない。
ちゃんと技術を自在に扱えることをルールにのっとって示さないとレベルはもらえません。

テクニカルパネルハンドブックP14「フライング・スピンおよびフライング・エントリーのあらゆるスピン:着氷姿勢」によると、着氷後、最初の2回転以内に基本姿勢に達し、その姿勢に最初に達した瞬間から、その姿勢を2回転保持しなければならない。とあります。
これらがクリアされてないと、プロトコルに「V」がついてしまい、大きく点数を失うわけです。

着氷後、シット基本形で2回転

fcssp2

はい、ここでようやく「難しいフライングの入り方」でレベルが獲れました。レベル1です。

ショートプログラムでは「難しいフライングの入り方」として、デスドロップではなくバタフライを入れていましたね。
まったく同じ構成でなく、こうやってショートとフリーで違う技を持ってこられるのは、スピン愛好者としてはうれしい限りです(^-^*)


レベル2:難ポジション(SF)

フリーレッグを前に突き出し、そこに上体を屈めて被せます。フリーレッグが前の位置にあるSF(シットフォワード)という難しいポジションで2回転
してレベルが獲れました。レベル2です。

fcssp3


足換えありのスピンは片方の足で獲れるレベルの数は二つまでです。
何度も出てくるのでもう覚えちゃいましたよね?(^-^*)
ここで足換えを行います。


レベル3:難ポジション(SB)

上体を屈め、フリーレッグを後に位置するSB(シットビハインド)という難しいポジションです。
この場合はフリーレッグを軸足の膝下にはさみ込んだ、通称リザーブドパンケーキという姿勢。
2回転することにより、レベルが獲れます。レベル3。あと一つ!

fcssp4


レベル4:8回転

SBの姿勢のまま、8回転に達するまで回ります
これでレベルを一つ獲り、全部でレベル4獲得です。

8回転する間、姿勢や軸足やエッジを変更してはいけません。8回転でレベルが獲れる姿勢は、キャメルとレイバックは基本形でもOKですが、他の姿勢は非基本姿勢も含め、みんな難ポジションでないといけません。※非基本姿勢はコンビネーションにおいてのみ。(テクニカルパネルハンドブックP17より)


途中で両手を広げたり前に持ってきたりして、表情をつけていましたね。
演技開始後4分近く経っていてとても苦しいはずなのに、8回転の間、スピードが落ちないのがすごいです。両手を広げたら遠心力が失われると思うのですが。

このFCSSp4の基礎点は3.00
ジャッジのつけた個別GOEは2 2 1 2 2 1 2で最終的なGOEは0.90
得点は3.90

動画はこちら→Yuzuru HANYU FS 2015 Autumn Classic International



さあ、三つ目のスピン、これで最後です。
CCoSp3p4(チェンジフットコンビネーションスピン 3基本姿勢入り)、足換えありのコンビネーションスピン。基本姿勢が三つ入っています。

CCoSp3p4
レベル1:難しい入り方

つま先をチョンとつくトウアラビアンを2回連続でやった後、キャメル姿勢のままダブルスリー(スリーターンという3の字を描くターンの2連続)をするトラベリングキャメルという技からスピンになだれ込みます。

ショートでやったイリュージョンもそうですが、片足でくるくる回りながらスピンに入るとかいったバランスを崩しそうな動きから間髪入れずスピンを始めると、難しい入り方と認定されるようです。

ac-tc
トウアラビアンからのトラベリングキャメル

もちろんこれも難しいフライングの時と同じく、難しい入り方をただやっただけではダメで、レベルを獲るためにはその後、基本姿勢で2回転が必要です。
ここではキャメルの基本形で2回転しています。ここでレベル1獲得。


レベル2:チェンジエッジ

かかとを先頭に回っていたのがつま先を先頭に回り始めたらチェンジエッジしたということです。

ac-change
キャメルの姿勢をとってから3回転目に背中を見せた時にチェンジエッジしています。

チェンジエッジの前後で2回転ずつ必要です。
ここでレベル2獲得。


3基本姿勢入りのコンビネーションスピンは、スピンのどこかにシット、キャメル、アップライトの三つの姿勢を組み入れなければいけません。入れるのは基本形でも難ポジションでもどちらでもOKです。
ここではシットの基本形を入れています。2回転が必要です。

恐ろしいことに、このSF(シットフォワード)のような姿勢は羽生選手のシット基本形なんですよ(Monkonさんに教えていただきました)。
ジェイソン・ブラウン選手も同じ形のスピンをやってましたが、難ポジションとしてレベルを獲っていなかったので、体幹のバランスに影響を与えていないと見なされるのか、この姿勢ではどうやら難しいポジションとは認定されないようです。

ccosp3


ここで足換えをします。もう耳タコだと思いますが(笑)、足換えありのスピンでは片足で獲れるレベルが二つまでなので、レベル2まで獲ったらそろそろ足を換えるタイミングだなとわかります。


レベル3:難ポジション(NBP)

ショートでも同じものをやっていましたが、NBP(ノンベーシックポジション=非基本姿勢)です。
アップライトの定義は「膝が真っ直ぐかやや曲がっている」というもので、これはもっと曲がっているのでアップライトではないと見なされます。
では膝が曲がってるからシットかというと、シットは太腿が氷面と少なくとも平行になるくらいまで腰を落とさないといけません
なので、シットでもないと見なされます。
キャメルはフリーレッグを後方に膝をヒップより高く上げないといけないので無関係ですね。

というわけで、どの基本姿勢にも該当しないので、非基本姿勢だと認定されるわけです。

2回転することでレベル獲得。レベル3です。

ccosp4


レベル4:難ポジション(US)

軸足を真っ直ぐ伸ばし(またはやや曲げて)、フリーレッグを後に交差させたUS(アップライトストレート)という難しいポジションです。
このように片手を上げて天を仰ぐ形を「トンプソン」と言います。
2回転してレベル獲得。

ccosp5

これでレベル4が獲れました。同時にキャメル、シット、アップライトを入れて3基本姿勢も入りました。

このCCoSp3p4の基礎点は3.50
ジャッジの個別GOEは2 1 2 2 2 2 2
最終的なGOEは1.00
得点は4.50です。


動画はこちら→Yuzuru HANYU FS 2015 Autumn Classic International


以上、「SEIMEI」のスピンレベル判定でした。

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うちのブログでは今、「あなたもレベル判定ができる!」を合言葉に「スピンを楽しもう」シリーズを絶賛(自分の中で)連載中です。
我流ですがレベル構成の見極め方や、レベルを取りこぼしたときの原因の探り方までやろうと思っていますので、レベル判定をやってみたいわという方はよければまたご訪問くださいね。ここから読み始めても大丈夫なように、初心者向けに詳しくやっていく予定ですヾ(*'-'*)

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[ 2015/10/28 ] スピンを楽しもう | TB(-) | CM(14)