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私がジャッジを信頼するのは

まずは私信ながら先日拍手コメをくださった方、温かいお言葉ありがとうございます。あちらの入口をご存じだということは、ほんとに長い間訪問していただいてるんですね。こんな興味の対象がコロコロ変わるブログを(^^;) ありがたいことです。
1ヶ月放置してたらトップに広告入ってさびれた感じになるんだわ忘れてた。とりあえずは生きてますよ~という意味でも、急いで前回の記事を上げました。

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さて、本題です。

五輪フィギュアの結果に満足していない人が多いようで、選手へのバッシングも酷いようで、私はもうそういうのに心を煩わすのがうんざりなんで(フィギュア嫌いになりそう)、なるべく見ないようにしているんですが、どうしてもツイッターのTLやニューストピックなどに流れてきて目にしてしまい、そのたびにモヤモヤしています。

採点競技の宿命でしょうね。どうしても誰の目にも納得という結果が見えないことが物議を醸すんですね。

まあ、贔屓選手の回転不足やエッジエラーは不当判定で、ライバル選手の加点は不正だと信じ込んでいる人には何を言ってもムダな気がしますが。

フィギュアスケートは特に芸能的側面が強いから、スケーターに自らの欲望をからめてキャラ化したり萌えたり過剰に感情移入してライバル叩いたりという人が多いですね。

私も選手萌えしてる一人なんで、あまりえらそうに人のことは言えんのですけどね(^^;)

女子フィギュアの結果も、妥当なもんじゃないのかなあと思います。プロトコルはざっとしか見ていないですが納得しています。

当初は、「速報によると浅田選手の結果は完璧で、回転不足もルッツのエッジエラーもとられていない」と誰かがツイートしていて、いや回転はわからんけどルッツは足がハの字に開いてルッツの動きではなかったしエラーちゃうのんジャッジおまけしたんかなそれは良くないわと思ってたら、プロトコルではしっかりエラーになってて、ジャンプの回転不足もしっかり判定されてて、そうだよな変な温情とかないわなジャッジちゃんと仕事してるわとホッと安心したのでした。

浅田選手の絶望からの踏ん張りは実に見事で、鳥肌立って涙しましたが、だからといってジャッジが甘い採点をしてたら失望したと思います。

私がジャッジを信頼するのは、何も自分の贔屓選手が高評価されてるからとか金メダル獲ったからとかが理由じゃないんですよ。

そもそも、元からそんなに陰謀論を信じていたわけではなかったし。ジャッジの好みや開催国特典的なちょっとした上げ下げはあるかもしれないな~程度の感覚でした。

それが改まったのが、前にも書きましたが、2012年にBS朝日で放送された「グランプリファイナル1週間前スペシャル」で、ISUレフェリーの岡部由起子さんによる疑似判定を見てからです。

その中で高橋大輔選手の「ロックンロールメドレー」のステップ映像を見ながら岡部さんがレベル判定をするというのがあり、「世界一のステップ」と評される高橋選手の演技に「ないです」を連発するクールな声が衝撃的でした。

これ、一部の高橋ファンにはすごく不評だったようですね(^^;)
どうもマイナスな判定や評価を選手への懲罰と受け止めるファンが多いような気がします。

ジャッジはただ、選手の行う演技を判定したり採点したりしているだけです。
粗探しの目で見てケチつけたり、ミスに罰を与えたりしているわけではないのです。

まあ、あの番組はちゃんとレベルとは? テクニカル・パネルの仕事とは? の説明から入ってないから、世間的にはただ高橋選手の演技へのダメ出しというイメージが先行してしまい、その点は番組側に配慮がなかったとは思いますが。

「ロックンロールメドレー」はかっこいい振り付けで高橋選手に合っていたにもかかわらず、シーズン途中で異例のプログラム変更がなされました。レベル4が取れなくて点数が伸びないというのが理由だったようですが、振り付けのどのような点がレベル4の認定に叶わなかったのでしょうか。

私もまだまだ勉強中でよくわからないので間違ってるかもしれませんが、レベル獲得の項目の一つに体幹のバランスに影響を与えるような上半身の動きをステップ・シークェンスの1/3の間入れないといけないというのがあり、これを満たしていなかったからではないのかなと思います。

見ると立った姿勢のまま移動するステップが多く、上半身を使ってバランスを崩すような動きはほとんどないですね。岡部さんの「ないです」はこのことなのかな、と。

【追記2014/7/30】
岡部さん、ちゃんと言及されていますね。言わなかったと勘違いしていました。すみません。


フィギュアは氷の上でバランスを取るボディコントロールの力が重視されます。それでバランスを崩したまま姿勢を維持する動きを振り付けに入れると評価されるのですが、その動きと魅力的な振り付けとの両立が結構難しいのですね。

レベルにより基礎点が違うので、高得点を狙うためにはレベル4でGOE+3取れる振り付けが一番いいのですが、無理にレベル4狙いで動きの美しさを殺す振り付けにしてGOEを下げるより、レベル3でも選手が生きる振り付けにしてGOEの加点を狙った方がいいという考え方もあり、そのへんの兼ね合いに悩みながら作る振付師は多いのではないかと思います。「ロックンロールメドレー」もその兼ね合いの中で生まれたプログラムなのかもしれません。

だから、レベル項目が「ないです」と言われたからといって、大ちゃんの世界一のステップをけなされた許せない! みたいな単純な話ではないんですよ。

……というような知識は当時まったくなかったので、なぜ岡部さんが「ないです」と言ってるのかわからず、ただ、今まで見たことのない実際のジャッジングに目からウロコでした。

ジャッジってこんなふうに採点してるんだ。打てば響くように、見たままを瞬時に判断している。そこに私情をはさめる余地なんてないんじゃないか。

そんなふうに思ったのを覚えています。

それまでは、もっと時間をかけて隣のジャッジと話したりしながら採点しているのかなと思っていました。もっとゆるい感じなのかなと(テクニカル・パネルとジャッジ・パネルがいることも知らなかった)。

私はわからないことをそのままにしておくのが嫌いで、すぐ調べたくなる性分なんですが、この時も、なんで大ちゃんの世界一のステップがダメ出しされた(実際はダメ出しではないんだけど)のか知りたい! と感じました。

それからルールを勉強し、プロトコルを見ながら演技を見、さらにはJスポーツ4に加入して、下位から上位レベルの選手の演技をジャッジ経験者の解説を聞きながら見ていくうちに、素人が抱く程度の疑問はあらかた解決し、フィギュアスケートの採点は思っていたよりよく考えられていて合理的だなと思うようになったのです。

20年、30年と研鑽を積んできたジャッジは、採点基準が体の中にしみこんでいます。演技を見ただけで、テクニカル・パネルならスピンやステップがレベルの要件をどこまで満たしているか、ジャンプの回転は足りているか、踏み切りエッジは正しいかなどを見分け、ジャッジ・パネルはGOEのプラス項目とマイナス項目のどれとどれに当てはまって最終的に何点になるか、5コンポーネンツでは何点をつけるのが妥当かなどを瞬時に振り分けることができるのです。

彼らの目と耳と脳がそのままルールのスケールなのです。

人間ってすごい。

スケーターの演技にもそう感じますが、それを判定し評価を下すジャッジの能力にも同じことを感じます。

本来点数をつけることが難しいものに基準を当てはめ評価することは、機械ではできません。人間の脳が見たものを瞬時に多角的に処理できるからこそできることなのです。

ジャッジ・パネルがいろいろな国のいろいろな価値基準を持った9人の集まりで形成されているというのもよく考えられているなと思います。

GOEは彼らが個別に採点したものから最高点と最低点を省き、要素の難度に応じた価値尺度(SOV)に変換し、平均化して最終的なGOEを出すというのも合理的ですね(たとえば、同じGOE+3でもダブルアクセルのSOVは1.5でトリプルアクセルは3.0と価値が倍になっています)。

もちろん、今の採点システムが完全なものだとは思いませんし、どのジャッジがどういう採点をしているのかや判定の基準となった映像の公開と解説、大会の講評など、もっと情報公開すべきことはあるんじゃないかとは思いますが。


フィギュアスケートは奥深い競技なので、技術やルールの知識を解説してくれているブログやツイートがたくさんありますが、信頼するに足りるものと捏造した情報をまき散らしているものとがあります。まさに玉石混淆なので見極めることが大事です。

私は人種差別者のブログはそれだけで訪問するに値しないと思っています。

それから、特定の選手を貶めるのが目的で、そのためにデータを捻じ曲げて使っているようなところ。

そもそも、そういうことを書いている人はまともな知識を持っていません。それらしい専門用語は駆使していますが、情報源が怪しくて、データがツッコミどころ満載です。

私が頼りになるなと感じるのは、たとえばスピンのレベル判定ができるような人。レベル4を狙った構成だったのにレベル2で終わってしまったのはなぜなのかを根拠を上げて示せるような人。

ステップやターンを見極められる人も信頼できます。あ、○○選手はクロス数が多いなどと無意味なカウントをして選手を貶めるようなのはダメですよ。そういうのじゃなくて、ちゃんとステップやターンを見極められる人、スピンのチェンジエッジの瞬間がわかる人も相当な猛者です。

そういう人は実際に自分でスケートをやっていたり、本当にスケートが好きでたくさんの演技を見て目が肥えている人ですね。
そしてそういう真のフィギュアスケートファンは、選手を貶めたりジャッジをバッシングしたりしません。

五輪を機にフィギュアの魅力に目覚めた方がもしこれを読んでいたら、どうぞそのあたりを心に留めてファンブログめぐりをしてくださいまし。陰謀論の泥沼にはまってフィギュアを愛せなくなるのは不幸ですから。

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[ 2014/03/02 ] フィギュアスケート雑感 | TB(-) | CM(4)